離婚の公正証書はどう作る?流れの全体像

先に結論をお伝えします。離婚の公正証書は、夫婦で決めた約束を公証役場で「公文書」にする手続きです。作り方の骨格は、次の5ステップに整理できます。

  1. 財産分与・養育費・面会交流などの内容を夫婦で合意する
  2. 合意した内容を原案(文案)にまとめる
  3. 公証役場に連絡して作成日を予約する
  4. 本人確認書類や戸籍など、必要書類をそろえる
  5. 当事者が公証役場に出向き、内容を確認して署名する

公証役場とは、公証人が公正証書などを作成する公的な役場です。全国にあり、どこの役場でも作成できます。予約なしで即日、という進め方は基本できません。事前のやり取りが前提です。

なぜわざわざ公正証書にするのか。理由は、後から「言った・言わない」でもめないようにするためと、養育費などが止まったときに差し押さえまで動ける形にしておくためです。離婚協議書との違いは離婚協議書と公正証書の違いで詳しく整理しています。

公正証書を作る5つのステップ

順番に中身を見ていきます。まずは、夫婦での合意です。財産分与、養育費の金額と支払い期間、面会交流の頻度など、決めるべき項目を一つずつ話し合います。ここがあいまいだと、後の原案づくりで必ず詰まります。

次に、合意内容を原案にまとめます。金額、支払日、振込先、期限といった条件を、文章として具体的に書き起こす作業です。この原案の精度が、公正証書の使い勝手を左右します。

原案ができたら、公証役場に連絡します。多くの役場では、原案を事前に送り、公証人がチェックしたうえで作成日を予約する流れです。当日いきなり口頭で伝える、という形ではありません。

そして作成日。当事者双方が公証役場に出向き、公証人が読み上げる内容を確認して署名・押印します。ここで公正証書が完成します。原則は本人の出頭ですが、都合がつかない場合は委任状を用意すれば代理人でも対応できます。

原案づくりは、専門知識があると安心な部分です。離婚協議書や公正証書の原案作成は、当事務所ではなく提携行政書士(シオン法務事務所)の業務としてご案内しています。

準備する必要書類

公正証書を作るときは、いくつかの書類が要ります。役場や内容によって細かな違いはありますが、代表的なものは次のとおりです。

  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)と印鑑
  • 戸籍謄本(夫婦の身分関係を確認するため)
  • 年金分割を含める場合は、年金手帳や年金分割の情報通知書
  • 不動産を分与する場合は、登記事項証明書や固定資産評価証明書
  • 預貯金や車など、財産分与の対象がわかる資料

たとえば、住宅ローンの残る自宅を財産分与に含めるなら、登記事項証明書が必要になります。何をどこまで盛り込むかで、そろえる書類は変わります。予約のときに、公証役場へ確認しておくと確実です。

代理人が出向く場合は、上記に加えて委任状と代理人の本人確認書類も準備します。委任状には委任する内容を明記します。

なお、必要書類は役場やケースで幅があります。実費や書類の詳しい内訳は離婚公正証書の費用もあわせてご覧ください。

「強制執行認諾文言」を入れる意味

公正証書を作るなら、ぜひ入れておきたい一文があります。「強制執行認諾文言」です。

これは「支払いを怠ったときは、ただちに強制執行に服する」という趣旨の一文です。この文言が入った公正証書は、裁判を経なくても差し押さえの手続きに進める「債務名義」になります。

具体例で考えます。養育費が途中で止まったとします。この文言があれば、あらためて裁判を起こさなくても、相手の給料や預金の差し押さえを申し立てられます。逆に、この一文がない公正証書では、すぐには差し押さえできません。養育費が払われないときの流れは養育費が払われないときの差し押さえで解説しています。

養育費のように長く続く支払いほど、この備えが効いてきます。強制執行そのものの申立てや裁判所への提出書類は、弁護士や司法書士が扱う分野です。ひとりで抱えず、早めに相談してください。

手数料は「目的価額」で変わる

公正証書の作成には、公証人へ支払う手数料がかかります。金額は一律ではありません。「目的価額」、つまり公正証書に書く金額の大きさによって変動します。

手数料の基準は、日本公証人連合会が公表しています(公正証書作成の手数料(日本公証人連合会))。目的価額が大きいほど手数料も上がる仕組みです。たとえば財産分与と養育費の総額が大きい離婚では、その分だけ手数料も高くなります。

離婚の公正証書は、財産分与・養育費・慰謝料など複数の項目を含むことが多いものです。項目ごとに価額を計算して合算するため、いくらになるかはケースによります。正確な金額は、原案を示したうえで公証役場に見積もってもらうのが確実です。

なお、公正証書の効力や当事者の義務については民法に定めがあります(民法(e-Gov法令検索))。費用の目安は離婚公正証書の費用でも触れています。

よくある質問

公正証書は必ず夫婦そろって作りに行くのですか?

原則は当事者双方が公証役場に出向きます。ただし、都合がつかないときは委任状を用意すれば代理人でも作成できます。どちらか一方が遠方、というケースでも進められます。

作成までにどれくらいの期間がかかりますか?

内容がまとまっているかで変わります。合意ができていて書類もそろっていれば、予約から数日〜2週間ほどが一つの目安です。話し合いが途中だと、その分だけ長くなります。あくまで目安で、役場の混み具合にもよります。

公正証書があれば、離婚届の証人は不要ですか?

いいえ、別のものです。協議離婚では、離婚届に成人2名の証人の署名が必要です。公正証書とは無関係に用意します。頼める人がいないときは離婚届の証人がいないときの対処法をご覧ください。

まとめ

離婚の公正証書の作り方を整理します。

  • 流れは「内容合意→原案→予約→必要書類→署名」の5ステップ
  • 必要書類は本人確認書類・戸籍・財産関係の資料が基本(ケースで変動)
  • 原則は本人出頭、委任状があれば代理人でも作成できる
  • 強制執行認諾文言を入れると、差し押さえまで動ける形になる
  • 手数料は目的価額で変わるため、原案を示して見積もりを取る

協議離婚では、公正証書とは別に離婚届の証人2名も必要です。頼める人がいない、周囲に知られたくないというときは、証人代行という方法があります。きずな証人代行は1通3,900円から、全国オンラインで対応しています。詳しくは申し込みの流れ料金プランをご覧ください。

本記事は一般的な情報の提供です。個別の法的判断や手続きについては、弁護士・行政書士・司法書士などの専門家にご相談ください。