婚前契約書とは?結婚前に財産のルールを決める契約
婚前契約書とは、これから結婚する二人が、財産の扱いなどを結婚前に取り決めておく契約書です。プレナップとも呼ばれます。
たとえば「結婚前から持っていた預金や不動産はそれぞれの財産とする」「生活費は収入に応じて分担する」といった約束を、書面にしておくものです。海外では広く使われ、日本でも少しずつ知られるようになりました。
法律上の土台になるのが、民法の「夫婦財産契約」という制度です。夫婦は、結婚後の財産関係を法律の定め(法定財産制)とは別に、自分たちで取り決めることができます。その取り決めを書面にしたものが、婚前契約書です。
もっとも、日本では約束のすべてに法的な強制力があるわけではありません。次から、制度の中身とできること・できないことを順番に見ていきます。
民法の夫婦財産契約は「婚姻届の前に登記」が要る
夫婦財産契約は、民法755条から759条に定められています(民法(e-Gov法令検索))。ここに、見落としやすい大事なルールがあります。
ポイントは、契約のタイミングと登記です。夫婦財産契約は、婚姻の届出前に結んでおく必要があります。結婚したあとでは、この民法上の夫婦財産契約は原則として結べません。財産に関する一般的な合意書は結婚後でも作れますが、民法の夫婦財産契約という制度は使えなくなります。
さらに重要なのが登記です。法定財産制と異なる取り決めをしても、婚姻届を出す前に登記しておかないと、第三者に対抗できません。たとえば「この不動産は妻の固有財産」と決めていても、登記がなければ、夫の債権者などの第三者に対してその主張を通せない場合があります。
- 契約は婚姻届の提出前に結ぶ
- 第三者に主張したいなら、婚姻届の前に登記する
- 登記は法務局で行う手続き
つまり、書面を交わすだけでは、対外的な効力の面で不十分になりがちです。二人の間の約束としては有効でも、外部との関係では登記が鍵を握る。ここが日本の制度の特徴です。登記の要否や進め方は、専門家に確認するのが確実です。
婚前契約書を作るメリット
最大のメリットは、お金の価値観を結婚前にすり合わせられることです。曖昧なまま結婚し、あとで揉める。そんな事態を防ぎやすくなります。
具体例を挙げます。共働きで生活費をどう分けるか、結婚前の貯金はどちらの財産か、住宅ローンの負担割合はどうするか。こうしたテーマを、感情が高ぶる前に落ち着いて話し合えます。話し合いの過程そのものが、相手の金銭感覚を知る機会にもなります。
- 財産や生活費の考え方を、事前に文章で共有できる
- 「言った・言わない」のすれ違いを減らせる
- 相続や事業を持つ家庭では、財産の切り分けを明確にできる
作成の対象になりやすいのは、財産分与に関わる財産の範囲です。何が個人の財産で、何が夫婦共有の財産か。この線引きを先に決めておくと、後の議論がスムーズになります。財産分与そのものの考え方は、財産分与とはで解説しています。
もちろん、婚前契約書は離婚を前提にした書類ではありません。むしろ、余計な不安を先に片づけ、安心して結婚生活を始めるための道具と考えてください。
婚前契約書の限界と離婚時の効力
便利な一方で、限界もあります。何でも決められるわけではありません。
まず、夫婦や親子の身分に関することは、契約で自由に変えられません。たとえば、あらかじめ親権者を一方に固定する、離婚しやすくする特約を入れる、といった取り決めは、公序良俗に反するとして無効になり得ます。子どもの養育費や親権は、離婚時点の子の利益を基準に判断されるためです。
離婚時の効力についても、注意がいります。財産の分け方を定めた条項は、一定の範囲で尊重されます。ただし、内容があまりに一方に不利だったり、事情が大きく変わったりした場合、その通りに認められないこともあります。契約書があれば争いがゼロになる、というものではありません。
確実性を高めたいときは、公証役場で公正証書として作る方法もあります。公証人が関与することで、内容の適法性や本人の意思を確認できます(日本公証人連合会)。離婚に備えた取り決めを公正証書にする流れは、離婚協議書と公正証書の違いも参考になります。
限界を知ったうえで使えば、婚前契約書は心強い備えになります。過信せず、専門家の目を通しておくのが安全です。
作成のサポートは提携行政書士へ
婚前契約書や夫婦財産契約の書面づくりには、法律の知識が要ります。ここは、専門家に任せるのが安心です。
当事務所(きずな証人代行)は、離婚届・婚姻届・養子縁組届の証人欄への署名代行を専門にしています。婚前契約書や公正証書などの書類作成そのものは行っていません。作成のサポートが必要なときは、離婚協議書・公正証書に対応する提携行政書士(シオン法務事務所)をご案内します。
たとえば、これから婚姻届を出す方で「証人を頼める人がいない」「職場や親族に知られたくない」という場合。証人代行という方法があります。当事務所は1通3,900円から、全国オンラインで対応しています。
詳しくは、申し込みの流れと料金プランをご覧ください。離婚後の各種手続きの流れは、離婚後の手続き一覧にまとめています。
よくある質問
Q1: 結婚したあとでも婚前契約書は作れますか?
夫婦財産契約は、原則として婚姻の届出前に結ぶ必要があります。結婚後に財産の取り決めを整理したい場合は、別の形での合意書になります。内容や可否は専門家に確認してください。
Q2: 婚前契約書があれば離婚のとき必ずその通りになりますか?
必ずとは言えません。財産の分け方は一定の範囲で尊重されますが、内容が著しく不公平だったり事情が変わったりすると、その通りに認められないことがあります。ケースによる判断です。
Q3: 登記をしないと婚前契約は無効ですか?
二人の間の約束としては有効です。ただし、婚姻届の前に登記していないと、債権者などの第三者に対してその内容を主張しにくくなります。対外的な効力を重視するなら登記を検討してください。
まとめ
- 婚前契約書とは、財産の扱いなどを結婚前に取り決めておく契約
- 民法の夫婦財産契約は婚姻届の前に結び、第三者対抗には婚姻届前の登記が必要(755〜759条)
- 認識合わせやトラブル予防に役立つが、身分に関する事項など決められない内容もある
- 書類作成のサポートは提携行政書士へ、婚姻届の証人は証人代行という選択肢
婚前契約書は、安心して結婚生活を始めるための備えです。限界を理解し、必要に応じて専門家の力を借りてください。
本記事は一般的な情報の提供です。個別の法的判断や手続きについては、弁護士・行政書士・司法書士などの専門家にご相談ください。



